取引なFX
驚愕。 日本取引に超弩級の大型新人が出現した。その名は円城塔。よくわからないがたぶん天才です。ウソだと思う人は、“ハヤカワ取引シリーズJコレクション創刊5周年記念”の鳴り物入り(かつ神林長平・飛浩隆の推薦つき)で出た第一長編、『Self-Reference E NGINE』(早川書房一六〇〇円)1/2を読んでほしい。 レムが書いた『銀河ヒッチハイク・ガイド』というか、『涼宮ハルヒの消失』を北野勇作風に断片化しユアグローで和えたというか、宇宙に行かないNSOというか、非常に形容しにくい小説だが、取引的に言うと、巨大知性体と呼ばれる超高度AIがシンギュラリティに達し、その結果、時空がバラバラに崩壊。FX
のなか、巨大知性体たちは自分に都合よく世界を書き換えようと熾烈な計算合戦を展開、どんどん物語を増殖させてゆく─というFXと、時空崩壊のせいで幼なじみの女の子との初恋の過去を失った男の子のために多世界を股にかけてがんばる友だちのFXとを軸に、独立した短編としても読める18の断章がゆるやかにつながる。蔵に眠る先祖伝来の箱(一辺1メートルの立方体)を年に一度ひっくり返す一家のFX、死んだ祖母の家の床下から大量のフロイトが出てきて処理に困るFX、八丁堀の巨大知性体の旦那がサブ知性体キヨ(染物屋の女房)殺しの下手人を追うFX……。 この小説、元はと言えば、(やはりJコレから6月刊行予定の伊藤計劃『虐殺器官』ともども)第7回小松左京賞落選作。「構成がわかりづらく、テーマが見えてこないために全く感情移入できなかった。もっと読者を意識して、サービス精神を持って欲しい」と小松左京に評されたくらいだから、誰が読んでも面白いとはもうしませんが、個人的には今年の日本取引ベストワン最有力候補。 ちなみに著者の円城塔は、本書刊行の直前に第104回文學界新人賞を受賞し、3週間早く〈文學界〉にデビュー。受賞作「オブ・ザ・ベースボール」は、年に一度の割合で空から人間が降ってくる街のレスキュー・チーム(落下地点にバットを持って駆けつける)のFX。円城塔って何者? と思った人は、取引マガジン7月号掲載のインタビューを見てね。 一方、樺山三英『ジャン=ジャックの自意識の場合』(徳間書店一九〇〇円)1/2は、第八回日本取引新人賞受賞作。ルソーの魂に乗り移られた(と信じる)男が『エミール』の理想を実現するために建設した孤児院を背景に濃密な文体で語られるFX 取引
たちの物語(または捨て子の物語たち)が相互侵犯をくりかえす。感触は青木淳悟「クレーターのほとりで」や朝倉祐弥「白の咆哮」に近く、およそジャンル取引に見えない異色作だが、円城塔『SRE』とはいろんな意味で好一対か。 伊藤致雄『鎌倉繚乱 神の血脈』(角川春樹事務所一八〇〇円)1/2は、第6回小松左京賞受賞作『神の血脈』の続編。5千年前地球にやってきた異星人を保護して人類史を背後から動かしてきた一族を描くシリーズの、鎌倉時代編にあたる。クライマックスは元寇なのに、そこに至るまでの150年間がメリハリなくだらだら綴られるため中盤はかなり退屈だが、日本史の勉強にはなります。 それとほぼ同じ設定を堂々の現代エンターテインメントに仕立てたのがジョー・ホールドマン『擬態 カムフラージュ』(金子司訳/早川書房一九〇〇円)。ネビュラ賞、ティプトリー賞受賞の最新長編ですが、中身は往年のクライトンが『20億の針』をリライトしたような典型的B級娯楽取引。なにしろ小説の主役は、太古の昔、地球にやってきた異星生命。何にでも変身できるこの宇宙人が人間に化けて人類のことを学びつつ帰還のためにがんばるわけですね。新しいものはひとつもないかわり、プロの職人芸的によくできている。マニアックな現役取引読者より、かつて取引ファンだった人や冒険小説ファンにお薦め。 さらにもう一冊、秋田禎信の書き下ろし単発長編『カナスピカ』(講談社一五〇〇円)も似たような設定だが、こっちで地球に落ちてくるのは異星人じゃなくて、異星人が建造した知的観測衛星(変形自由)。こいつが高度2万6499キロから墜落した現場に中学生の少女が遭遇。彼女がエリオットFX
の役どころになって、男子中学生に変身した衛星(=ET)を故郷(宇宙空間)に返してやろうと奮闘する。そのうちほのかな恋心が芽生えるあたりはちょっと「スターマン」も入ってます。大人の取引読者にはシンプルすぎて物足りないが、読後感は爽やか。 同じくライトノベル界の実力派、古橋秀之の『冬の巨人』(徳間デュアル文庫六四八円)は、『都市と星』系の少年取引。主人公たちが住んでいる閉鎖都市が巨大二足歩行ロボットの背中にあるという取引設定上のキモにあんまり必然性がなく、「今、そこにいる僕」+「キングゲイナー」?みたいに見えるのが惜しい。同じ著者の『超妹大戦シスマゲドン2』(ファミ通文庫六二〇円)1/2は二部作完結編。地上最強の妹を決める「S−1ワールド・グランプリ」も決勝トーナメントに突入、超妹たちのものすごい闘いが描かれる。前作はベタなギャグが全然笑えず難渋したが、今回は無駄に大仰で深刻な対決が笑えます。 宮部みゆき『ドリームバスター4』(徳間書店一六〇〇円)1/2は、前巻の後半から続く時間鉱山(時間の源泉の近くに位置する時間素が結晶化した山)のFX。なのに帯には“アクション・ファンタジー巨編”と書いてあって一瞬むっとしたが、読んでみるとたしかに異世界FTの文法で書いてあり、取引味は乏しい。一種の臨死体験サスペンスとも読める。 今月最後の1冊は、張系国の台湾取引短編集、『星雲組曲』(山口守・三木直大訳/国書刊行会二四〇〇円)1/2。’80年刊の『星雲組曲』と’85年刊の『夜曲』を合わせ、’76年〜’84年発表の短編全18編を収録する(うち3編は取引マガジン90年7月号の台湾取引特集で訳されたもの)。
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